「ザ・フォージャー 天才贋作作家 最後のミッション」〜ある意味で結末を描かなかった映画〜伏線解説感想考察!
ジャンルとしては、家族愛の物語になるのだろうか。贋作を作り、美術館から絵を盗み出すのだが、全くスト―リーのメインではない。余命が短い息子のために、刑務所から無理して出てきた父親ができる限りの事をしてあげる、家族のお話だ。
主人公レイは、贋作作家であり、逮捕されて刑務所暮らしをしている中で始まる。息子の病気が重く、残された時間が少ないことを知り、何としても一緒に過ごす時間を⻑く取りたいと必死だ。その思いを利用されて、悪人キーンから仮出所と交換で贋作依頼を引き受けさせられてしまう。見る前の予想では、もっとサスペンス調というか、ハラハラドキドキの物語だと思っていたが、むしろ基本的には穏やかなトーンで進んでいった。
美術館に侵入してモネの作品を贋作とすり替えて盗む大事件はあっさり成功するし、悪人どもは簡単に描写されただけで、完全にどうなったかまでは描かれ ていない。あれだけ追ってきていた警察との決着も、それとなくで終わってしま った。
絵が美術館に戻ってきていたという事実と、レイの家族が全員空港の検査をパスできたことから、円満に解決されたことは伺えるが、あくまで間接的な描写だ。クライマックスの結末を間接的描写で終わらせる描き方は新鮮だった。
最後にタヒチで 3 人が楽しむ姿はなんとも言えない暖かさと寂しさがある。息子からの3つのお願いも律儀に反対しつつ叶えようとしてやる姿は子供のことを考えるいい父親だし、息子の態度もどんどん軟化していく。とはいっても、硬 かったのは最初の朝のシーンくらいかもしれないけれど。
母親との対面シーンでも、誰もが必死になって楽しい時間を作ろうと努力している姿が健気だった。息子も全てを分かった上で最後にお礼を言っている姿は成⻑の証だと思う。たいてい、母親がヤク中のことを隠しきれずに最悪の終わり方をする場合が多いが、この映画はここでも独自色を出していたと思う。
この映画はある意味、結末を描かなかった映画と言えるのかもしれない。結末を描く場合、どうしても避けては通れなくなってしまうのが、息子の病気と死だ。それをあえて描かず、家族 3 人の幸せな瞬間のピークを切り取り終わらせたこの映画は、ある意味一番のクライマックスを描いた作品と言える。緊迫感と重いシーンの連続になりがちなシチュエーション設定の中で、家族関係に焦点を当てて柔らかく描いた、いい映画だと思う。
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